アリアが祈る!
第1話 冥福を祈る
とある貴族の娘には大きな罪があった。
表は地方から來た人を助ける善人、裏は地方から來た人を死ぬまで拷問する悪人。
「……俺が斬る!」
貴族の娘は少年タツミに體を斬られ、悪人らしい死を迎えるはずだった。
貴族の娘の名はアリア。
體を斬られたアリアは現実とは違う世界に飛ばされた。
そこは無限に広がる真っ暗な世界。
その世界には、かつてアリアが拷問し、殺した人達がいた。
「許さない!」
「私達の人生を返して!」
「俺が味わった傷みをお前も味わえ!」
男はアリアの顏を毆った。
少女はアリアに向かって石を投げた。
少年は木の棒でアリアの腹を叩いた。
罵聲、痛み、死の恐怖がアリアに降りかかった。
「來ないで!來ないでよ!」
アリアは逃げようと走り出した。
「はあ…………はあ…………」
なぜ斬られた體が元に戻っているのか?。
どうして死んだはずの家畜(人間)が私の前に現れたのか?。
ここはどこなのか?。
アリアにはわからなかった。
◇◇◇
帝都のとある宿屋。
男はある人物を待つため、ここに滯在していた。
テーブルの上にある指輪を眺めながら、男は紅茶を飲む。
指輪はまるで生きているかのように揺れていた。
「レイン、貰って來たぜ!」
部屋の窓から入って來たのは一匹の鷹。
鷹は男のボサボサの黒髪に一枚の紙を置いた。
鷹が貰って來た紙は許可書。
それは『ナイトレイド』と協力することを帝國が認める特別なものだ。
「ありがとう、ウィン」
男の名前はレイン。
賞金稼ぎとして有名で、リボルバーの帝具 『黒夢ナイトメア』を使う。
「それにしても……よく通ったなこれ、ナイトレイドとの協力を認める許可書って……」
鷹の名はウィン。
レインの相棒で、人の言葉を使う世にも珍しい鷹だ。
「エスデスがなんとかしてくれたからな」
エスデスは帝國の將軍で、レインの戦友だった人だ。
エスデスと協力して多くの犯罪者を捕まえたことがあり、特に大きな犯罪組織を壊滅させた功績は賞金稼ぎと帝國の將軍という奇妙な組合せだったこともあり、多くの人がこの功績を知っている。
「それに、あの化け物はナイトレイドのアカメが持つ村雨でしか殺せないからな。帝國も仕方がないと思ったんだろ」
許可書の內容を確認しつつ、レインはウィンに說明した。
「なるほどな」
「これでナイトレイドと交渉ができるな」
「ナジェンダもお前の戦友だろ?」
「ああ、明日會う予定だ。後は………」
紅茶を飲み幹すと、レインは指輪を手のひらに置いた。
「アリアを待つだけだ」
揺れる指輪を見つめるレイン。
それは化け物を倒すために必要なものだった。
◇◇◇
何処まで逃げてもアリアに殺された人達はアリアの目の前に現れる。
無限の暗に出口はない。
體力を消耗し、呼吸が亂れ、最後は転んでしまった。
逃げることを止めたアリアは座り込み、耳をふさいだ。
「ごめんなさいは?」
「罪を償え!」
「お前は何をしたのかわかっているのか?」
彼らの言葉は耳をふさいだアリアに屆かなかった。
でも、アリアは悲鳴を上げた。
言葉ではなく、さらに辛いものがアリアに屆いたからだ。
「やめて!やめてよ!」
アリアに屆いたのは彼らが死ぬ直前の記憶。
「いや……怖い……痛い……」
拷問で楽しむアリアの姿、拷問で血を吐く彼らの姿、目の前で仲間が殺されて泣いている彼らの姿。
頭の中で流れる彼らの記憶は恐怖と絕望に満ちていた。
「だって……だってパパとママが喜んでくれたんだもん。そしたら私も楽しくなって……」
彼らの記憶が終わった瞬間、アリアの目から涙が溢れた。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
小さな聲だったが、アリアは彼らに謝った。
「悪いことしてごめんなさい……家畜とか豚とか言って……ごめんなさい………」
涙で顏がぐしゃぐしゃになる。
聲がかれるまで泣き続け、謝った。
彼らはアリアの姿を見つめる。
アリアが本當に反省しているのは誰もがわかった。
「「アリア」」
何度も謝るアリアの姿を見て、彼らは安堵する。
聲を掛けたのはある少年と少女だった。
「俺達のことを覚えているか?」
「もう泣かないで」
タツミの幼なじみ、イエヤスとサヨだった。
サヨはハンカチをアリアに渡す。
二人を覚えていたアリアは小さな聲で「覚えている……ありがとう……ごめんなさい……」と言う。
「もう悪いことするなよ」
「うん………」
アリアは小さく頷く。
イエヤスは笑顏になり、アリアの頭をなでた。
「私ね、アリアの髪、好きだよ」
サヨは笑顏でアリアにそう言った。
「え………!?」
「初めて會った時、綺麗でいいな~って思ってたの。だから、これからもその綺麗な髪を大切にしてね」
「うん……」
「もう悪いことしないって誓う?」
「うん……」
「じゃあ、指切りしましょう。ここにいるみんなの約束、忘れないでね」
「うん……」
約束の厳守を誓う簡単な儀式、指切り。
アリア、サヨ、イエヤスの3人で行った指切りは……
「「指切りげんまん、ついたら針千本飲~ます」」
みんなに聞こえるようにサヨとイエヤスが大聲で言い、アリアは泣きながら……そして小さな聲で
「指切った」
と約束の言葉を言ったのだ。
殺された人達は約束を信じ、アリアに笑顏を見せて消えて言った。
「タツミにも謝っとけよ!。許して貰えるように俺達がタツミに說得するからさ!」
イエヤスの言葉が最後だった。
アリアの視界は真っ白になった。
數秒後、アリアの視界は別の世界に切り替わる。
指輪から飛び出したアリアは床に叩きつけられた。
とある宿屋のとある部屋。
「私、指輪の中にいたの?」という驚きと體の痛みで、アリアは少し混亂していたが、この部屋に見覚えがあったのですぐにここが帝都にある宿屋だと気づいた。
「はじめまして、アリア。俺の名はレイン、賞金稼ぎだ、よろしく」
アリアの目の前に立っていたボサボサの黒髪の男は笑顏で挨拶した。
これが、アリアの第2の人生の始まりだった。
アリアが祈る!
第3話 完治を祈る
前言:とある貴族の娘には大きな罪があった。表は地方から來た人を助ける善人、裏は地方から來た人を死ぬまで拷問する悪人。貴族の娘は一人の少年に體を斬られ、悪人らしい死を迎えるはずだった。娘の名はアリア。アリアはヒーリングという帝具に選ばれ、第2の人生が始まった。第2話→ novel/4061642 第4話→8月中。次回はいよいよ戦闘に入ります。アリアのCM終わって悲しい……。
帝都のとある吃茶店。
一人で紅茶を飲みながら、アリアは『とある悪人の人生』を読んでいた。
「レインの師匠……」
その本にはレインの師匠の人生が記されていた。
レインの師匠の名はクライム。
殺し屋である両親の影響で、人を殺すのが當たり前だと感じていた彼は多くの人間を殺した。
彼がヒーリングに選ばれたのは二十歳の誕生日。
その日、彼は帝國軍の將軍に首を斬られたらしい。
ヒーリングに選ばれた彼は一命をとりとめ、罪を償うため帝國軍の醫療班となった。
多くの兵士や市民の怪我を直し、次第に彼はみんなにドクターと呼ばれるようになった。
「この人は……ちゃんと罪を償っているんだ」
アリアはクライムの人生を少しずつ知り、自分も罪を償えるのか?と不安になる。
何故なら、彼女の奧底には誰かを死ぬまで拷問したいという気持ちがまだ殘っているからだ。
そして本を読み進めると、クライムの人生を変える人物が本の後半で現れた。
「さあ!血の雨を降らせよう」
醫療班を引退し、醫者として世界を旅していたクライムはシエルという小さな村で、ある少年に出會った。
大人の2倍くらいはある危険種に囲まれていた10歳くらいの少年は黒いリボルバーを持ち、生意気な顏でこの臺詞を言っていたのだ。
「少年、危ない!」
クライムの聲と同時に、銃聲が鳴った。
數秒後、彼の目に映っていたのは大量の血を流して倒れている危険種とそれを見て笑う少年。
少年は圧倒的な力で危険種を倒したのだ。
「じいさん、誰?」
少年はクライムの存在に気付いた。
殺気に満ちた目。
少年の目を見て、クライムは少しだけ體が震える。
「私はクライム、醫者だ。ここはシエルという村であっているかな?」
「シエル……?。はは……は……あははははははははは!」
クライムが少年に問うと、少年は急に笑い始めた。
笑いながら、動かなくなった危険種に何度も銃弾を撃ち込んだ。
「あはははははは……はは……」
そして少年は笑い終えると、まるで糸が切れたマリオネットのように動かなくなる。
何もかも絕望したような目をしていた。
「シエル……?。そんな村ないよ……。だってもう無くなったんだから」
「どういうことだ……?」
「みんな!化け物に殺されたんだ!。俺を育ててくれた家族も!勉強を教えてくれた先生も!いつも遊んでいた友達も!。みんな!みんな!……もう……いないんだよ……」
少年は泣いていた。
手に持っていたリボルバーがゆっくりと落ちた。
少年の涙は雨のように落ちる。
「俺……村を危険種からずっと守っていたんだ。帝具『黒夢ナイトメア』で多くの人を守ってきたんだ。でも……勝てなかった……化け物を殺すことができなかった……守れなかった。そして、俺も呪いで死ぬんだ」
「少年……!?」
少年の顏に浮かび上がる黒い模様。
それは人を殺す効果がある呪詛だとクライムは理解した。
「化け物は……この呪いでみんなを殺したんだ。これ、ヒーリングしか治せないんだって……はは……もう息が苦しくなってきたよ」
「運がよかったな、少年よ」
少年を抱き締めるクライム。
クライムはヒーリングの力で呪い解除を試みる。
二人はヒーリングから溢れ出る強い光に包まれ、少年の體に広がる黒い模様が消えた。
「じいさん……あんた……!」
「昔の私だったら、このヒーリングでこんな呪い打ち消せるんだけど……今の私にはこれしかできないな。せいぜい……後、一年かの……私の人生は……」
「じいさん!」
少年は呪詛から解放されたが、呪詛はクライムの體に移った。
ヒーリングのおかげで呪詛をある程度抑えることができたが、それでも長くは生きられない。
クライムはゆっくりと倒れてしまった。
それが……クライムとレインの出會いだった。
クライムの過去であり、レインの過去でもある物語はアリアを驚かせた。
「これが……レインの過去?」
本は殘り數ページ。
クライムの弟子となり、1年間、戦い方の基礎や知識を學ぶレインと、殘りの人生を楽しむクライムの姿が書かれていた。
そして、最後のページ。
それは沖撃的な內容だった。
「ひっ……!」
呪詛で死んでしまった村の人の寫真が載っていたのだ。
苦痛の表情を殘したまま絕命しているレインの両親、先生、友達。
どうやらレインの希望で載せたようだ。
「これが……カース?」
死んでいる人間を見て、笑っている女性の寫真。
寫真に『カース』と名前が書かれていたのだ。
血で染まった白衣を著た女性の顏や手には黒い模様があった。
その寫真のページにこう書かれていた。
「ヒーリングを持つ者よ。カースを止めてくれ」
それはヒーリングを持つアリアに対してのメッセージだった。
クライムはもうこの世にはいない。
本を読んでいたアリアは次第に涙が溢れた。
「あれ……?私、どうして泣いているんだろう?」
涙が止まらない。
本を読むのを止めて、アリアはハンカチで涙を拭いた。
そのハンカチはあの世でサヨから貰ったハンカチ。
涙が止まり、アリアはしばらくサヨのハンカチを見つめていた。
◇◇◇
ナイトレイドはある任務を実行していた。
それはアリアを監視すること。
ナイトレイドはアリアとその家族の悪行を知っているため、念のため監視することになった。
監視役は二人。
その二人はアリアが知っている人物だ。
「ふーん、本當に生きていたんだな」
一人は『百獣王化ライオネル』という帝具を持った金髪巨乳の女性。
女性の名はレオーネ。
「ああ、本當だったんだな……じゃあ、もしかしたら……」
もう一人は大剣を持った明るく優しそうな少年。
少年の名はタツミ。
アリアに殺されたサヨとイエヤスの幼馴染みである。
そして、アリアを斬ったのはこのタツミだ。
「どうしたの?」
考え込むタツミを見て、質問するレオーネ。
でもタツミは軽く首を振り、「何でもない」と小さな聲で言った。
「ん……?」
首を傾げるレオーネ。
「あ、アリアがいつの間にか移動している」
まるで話をそらすかのように言うタツミ。
しかし、アリアの監視をしているので、見失うわけにはいかない。
アリアはいつの間にか吃茶店の外にいた。
アリアは小さな子供と一緒にいた。
◇◇◇
子供は大きな聲で泣いていた。
數分前、子供はアイスを持って嬉しそうに走っていたが、転んでしまった。
アイスは地面に落ち、子供の足に擦り傷が出きた。
「うあ~ん!アイスが~!足痛いよ~!」
擦り傷を手で押さえ、泣いている子供。
子供が泣いている原因がわかったアリアは子供に話し掛ける。
「大丈夫よ、泣かないで」
アリアは子供の頭を優しく撫でる。
すると、アリアの手が光ったのだ。
その光はヒーリングの光だった。
ヒーリングの光は子供の足を優しく包んだ。
「あれ……?痛くない……?」
子供は自分の足を見た。
子供は驚いた。
なんと擦り傷が無くなっていたのだ。
子供はキラキラした目でアリアを見る。
「お姉ちゃん、ありがとう!。もしかしてお姉ちゃん、魔法使い?」
「……すごい……」
実はアリアも驚いていた。
『助けたい者がいるなら、助けたいと強く祈れ』
これは『とある悪人の人生』に書かれていたヒーリングの使い方の一つだ。
アリアはそれを思い出し、試してみた。
そして、『この子の傷を治したい』という祈りが子供の足を治したのだ。
この時、アリアはヒーリングの本當の使い方を知った。
「お姉ちゃん……?」
「え!?。あ、ああ何でもないよ。何でもない。そうだ、これあげる」
アリアは1枚の紙を渡した。
それはアイスの無料券。
吃茶店で紅茶を註文した時に店員さんから貰ったものだ。
「いいの?」
「うん、いいよ」
「わーい、ありがとうお姉ちゃん!」
子供はとても嬉しそうだった。
アリアは子供の頭を撫で、「バイバイ」と言った。
アリアは嬉しそうに歩く。
「私も……罪を償えるかな?」
少しだけ自信がついた。
クライムのように私も罪を償えることができるかもしれない。
そう思いながら、アリアはレイン達が泊まっている宿屋へと戻っていくのだった。
アリアが祈る!
第4話 健闘を祈る
前言:とある貴族の娘には大きな罪があった。表は地方から來た人を助ける善人、裏は地方から來た人を死ぬまで拷問する悪人。貴族の娘は一人の少年に體を斬られ、悪人らしい死を迎えるはずだった。娘の名はアリア。アリアはヒーリングという帝具に選ばれ、第2の人生が始まった。第3話→ novel/4117200 第5話→9月中。アカメが斬る!で一番可愛いのはアリアです!。
金曜日の夜、帝都は満月の光に照らされていた。
今宵はカースが宣言した複讐の日。
帝都の広場でカースが現れるのを待っているレイン、ウィン、アリアは満月を見ていた。
「いよいよだな」
「うん。私……できるかな?」
「できるさ、お前は師匠と同じように使えるようになったんだ。絕対勝てる」
レインは自分の手を見る。
手に広がる黒い模様。
カースの呪詛がレインの手の中でうごめいていた。
もうカースは帝都全體に呪詛を掛けていた。
それもかつてレインが受けたものよりも強力な呪詛だ。
帝都にいる人達全員に、この黒い模様があった。
もちろん、ナイトレイドも……。
もう逃げることはできない。
カースを倒すしかないのだ。
「そうだといいけど……」
だが、アリアは大きな不安を感じていた。
今のままでは勝てない。
今のままでは全員死ぬ。
そう……ヒーリングが言っているような気がしたのだ。
「そう不安になるな。俺らがいるって」
ウィンはアリアを勵ました。
アリアは「そうね」と笑顏で言ったが、聲がいつもより小さかった。
「きたか」
ハイヒールで歩く音が聞こえた。
聞こえた方向に目を向けるレイン。
そこにいたのは血で染まった白衣を著た女性だった。
「あれが……カース!?」
「ああ……そうだ。はっきり覚えているよ、あいつの顏は」
黒夢ナイトメアの銃身を空に向けるレイン。
怒りを込めた弾丸を空に打ち上げた。
「さあ、血の雨を降らせよう!」
いつも言う臺詞をレインは高らかに言い、カースに向かって3発の弾丸を撃った。
『複讐の時が來た!』
レインの弾丸はカースには屆かなかった。
カースは危険種『レッドムーン』を召喚し、レッドムーンを盾にしたのだ。
レッドムーンは悲鳴を上げ、絕命する。
「アリア、ヒーリングだ!」
「はい!」
アリアはカースがまとう呪詛を解除しようとヒーリングの力を発動する。
カースがまとう呪詛はあまりにも強力で、解除するのに最低でも5分はかかる。
『ヒーリングを持つ者よ……また我の邪魔をするか……?』
カースは數え切れない程のレッドムーンを召喚した。
レッドムーン達は一斉にアリアを狙う。
『邪魔をするなあああああああ!』
カースは叫び、両手を黒い剣に変えた。
アリアの首を斬ろうと走り出すカース。
だが、首を斬られるのはカースの方だった。
『何……?』
「すみません」
巨大なハサミを持った眼鏡の女性がカースの首を斬ったのだ。
女性の名はシェーレ。
ハサミの帝具、萬物両斷エクスタスを持つナイトレイドの仕事擔當だ。
『空に打ち上げた弾丸は攻撃の合図だったのか?』
「はい」
シェーレは答えながら、エクスタスでカースの胴體を斬る。
レインが打ち上げた弾丸は作戦開始の合図だった。
カースは自身が持つ再生能力で完全に複活する。
『ただの人間に……私が倒せると思ったのか?』
カースは呪文を唱え、強力な風を生み出した。
飛ばされるシェーレ。
壁に叩き付けられ、ゆっくりと倒れた。
『こいつはもう……私の呪詛で動けない。そのまま苦しみながら死ね』
「カァァァァァス!!」
倒れたシェーレを見たレインは叫び、何十発の暗の銃弾をカースに放った。
レインとカースの戦いが始まり、帝都全體が戦いの場へ変わった。
アリアは戦いを見ず、ヒーリングの力を最大まで引き出すため、祈りに集中した。
そして、アリアを守るため、ウィンとアカメとナジェンダはレッドムーンに攻撃を仕掛けたのだった。
「葬る!」
アカメはアリアの目の前に現れると、レッドムーンを斬った。
傷ついたレッドムーンは村雨の呪毒で苦しみ、命を落とす。
「久しぶりの戦闘だな」
アリアの背中を守るのはナイトレイドのリーダーとレインの相棒。
ナジェンダは狀況を観察しつつ、3匹のレッドムーンを義手で摑み、投げ飛ばす。
「頼むぞ!ウィン!」
「おう!」
ウィンの翼は黃金の翼に変わる。
獲物を狙う鷹の目でレッドムーンの心臓をロックオンする。
「黃金の剣!」
ウィンは黃金の翼で3匹のレッドムーンの體を斬り裂いた。
レッドムーンの體はバラバラになり、地面に落ちる。
ナジェンダとウィンは嬉しそうにハイタッチすると、次の獲物に目を向けた。
そしてレインは……
「黒夢」
レインは黒夢ナイトメアの『奧の手』を発動した。
ナイトメアの『奧の手』は『黒夢』。
光を通さない黒い暗で相手を包み、相手の力を4分の1にする力がある。
『やめろ……やめろ……!』
さらに相手のもっとも辛い記憶を見せることができる。
カースは黒い暗に包まれ、苦しみ出した。
自身の辛い記憶のせいで悲鳴を上げるカース。
『私は……私は……』
「苦しそうだな」
カースの目には何が映っているのだろうか?。
そんなことを考えながらレインは暗の弾丸をカースに撃ち込んだ。
カースの胸の中で爆発する弾丸。
弾丸の中から黒いネットが現れ、ネットはカースの體を捕らえた。
「お前は……もう終わりだ。黒夢を見ながら……地獄に行けよ」
必死に抵抗するカースを見下すように見るレイン。
「アリア、アカメ……終わらせてくれ」
「「はい!」」
アリアはヒーリングの力でカースがまとう呪詛を解除する。
呪詛という鎧を失ったカースはまだ黒夢で苦しんでいた。
「葬る!」
戦いを終わらせるため、アカメはカースの體を斬った。
呪毒が體中に広がり、悲鳴を上げるカース。
これで……戦いは終わるはずだった。
ここで……カースの人生は終わるはずだった。
『ふふ……昔できた呪毒の抗體のおかげで助かった……』
「え……!?」
戦いが終わったと思っていたアカメはカースのパンチをかわすことができなかった。
アカメはゆっくりと倒れてしまう。
『どうやら……私の呪詛が効いてきたようだな。後で10分で全員死ぬだろう』
カースの笑い聲が帝都に響いた。
呪詛のせいでナジェンダ、ウィンも動けなくなった。
かつて呪詛をかけられたことがあるレイン、ヒーリングを持つアリアはまだ體を動かすことはできたが、レインは『黒夢』、アリアはヒーリングを使える力が無くなっていた。
『さらばだ、ヒーリングを持つ者よ』
カースは強力な風を生み出し、アリアに放った。
アリアは逃げようとするが、體が思うように動かなかった。
「レイン!」
アリアを守るため、レインは自身の體でカースの攻撃を受け止めた。
ゆっくり倒れるレインをアリアは優しく抱いた。
心配するアリアの顏を見たレインは……
「ごめん……また勝てなかった……」
涙を流しながら謝った。
アリアが祈る!
第5話 平和を祈る
アリアはどうすればいいかわからなかった。
呪詛のせいでヒーリングは使えない。
圧倒的な強さを持ったレイン達が倒れた。
カースにはアカメの村雨の呪毒で大きなダメージがあったが、致命傷ではない。
まだカースは戦う余裕がある。
「俺……伝説級の危険種を倒したり……帝國の將軍に勝ったり……結構強くなったんだけどな……またカースを止めることができなかった……」
レインは諦めていた。
戦うことも……。
生きることも……。
「アリア……ごめんな」
「レイン……」
『いいのか?これで終わって?』
「え……!?」
いつの間にか世界は真っ白になっていた。
抱いてたはずのレインがいなくなっていた。
『君には大きな力がある。この私、クライムよりも大きな力がね』
杖をついた白髪のお爺さんがアリアの目の前に立っていた。
お爺さんの右手の人差し指にはヒーリングがあった。
「クライムって……もしかしてレインの……」
『レインは強くなったよ……さすが私の弟子だ。充分に頑張ったよ。さて、君は……レイン達の戦いを無駄にしたい?』
「し、したくないよ……でも私はもう……」
レイン達の戦いを無駄にしたくない。
レイン達を助けたい。
しかし、アリアの體は呪詛で體を動かすことも困難になっていた。
『呪詛で戦えないと?』
「はい……」
小さく頷くアリア。
クライムは微笑み、アリアの頭を優しく撫でる。
『希望を持つんだ』
「え……?」
『希望を持つんだ。絶望せず、ただ君は平和を祈るんだ』
「平和を……祈る?」
『君はもう貴族の娘だった頃の君じゃない。君はどうしたい?』
クライムは質問をした。
アリアは自分の過去を振り返る。
前は他人のことなんてあまり考えたことがあった。
他人がどうなろうと、関係がなかった。
でもアリアは変わったのだ。
「「指切りげんまん、ついたら針千本飲~ます」」
アリアはサヨとイエヤスの指切りを思い出す。
サヨとイエヤスの聲が頭の中で流れた。
「指切った」
あの時、アリアは約束の言葉を言ったのだ。
アリアはゆっくりと息を吸い、自分の答えをクライムに伝える。
「もう誰も死んで欲しくない。私は……みんなを助けたい」
『そうか』
クライムはアリアの答えを聞いて、安心した。
クライムは自分が持っているヒーリングを外し、ヒーリングをアリアのヒーリングに重ねた。
『悪人が言う臺詞ではないな……。ヒーリングを持つ者はみんなそうだ。いつの間にか善人になってしまう。不思議な帝具だろ……?』
「そうですね。私、この帝具に會えてよかった」
『さあ、行きなさい。全てを終わらせるんだ』
「はい!」
アリアは祈る。
全てを終わらせるために。
みんなを助けるために。
アリアの祈りは優しい光へと変わった。
『なんだ!この光は……』
カースは目を押さえる。
アリアから広がる優しい光は帝都全體を包んだ。
「奧の手……『優しい世界』」
アリアの服は白いドレスへと変わった。
アリアは祈りながら、ゆっくりと前に進む。
アリアの後ろには多くの人がいた。
彼らはかつてアリアに殺された人達だ。
『さあ、行こうぜ!』
『行きましょう、みんな』
イエヤスとサヨは彼らの中心として立っていた。
彼らは幽霊だが、彼らの聲と姿はヒーリングによって認識できるようになっていた。
『ハサミのお嬢ちゃん、後もう少しだ』
『アカメさん、頑張ってください』
彼らは勵ましの言葉を言った後、レイン達の體に觸れた。
觸れた瞬間、ガラスが割れるようにカースの呪詛が壊れた。
「アリア……お前、師匠を超えたよ」
レインはサヨとイエヤスに腕を引っ張られ、立ち上がった。
「アリアが頑張ってるんだ。俺も頑張らないとな」
レインは再び『黒夢』を発動した。
『黒夢』に苦しむカース。
『レッドムーン!、ヒーリングを持つ者を殺せ!』
カースは何も考えず、レッドムーンを召喚した。
數えきれない程のレッドムーンがアリアの命を狙う。
しかし、アリアは祈るのを止めなかった。
「「うおおおおおおおお!」」
レッドムーンの頭を貫く弾丸。
アリアを守ったのはウィンとレインだった。
本日2回目の『奧の手』の発動でレインの體力はもうあまりなかった。
だから、彼はウィンの力を借りた。
「そのまま進め!アリア!」
ウィンはレインの肩を摑み、空を飛んでいた。
強い風を作り出し、アリアを狙うレッドムーンを吹き飛ばす。
レインの弾丸とウィンの風はアリアを守る最高の攻撃と防禦だった。
『うわ……うわ……』
『黒夢』を見ているカースはアリアが近づいていることに気が付かなかった。
アリアはカースの目の前に立つと……
「カース……」
アリアはカースを抱きしめた。
優しい光に包まれ、カースは涙を流した。
カースは自身が持つ悩みを突然話始める。
『私は……ヒーリングになれなかった。私は……力を押さえることができず……暴れることしかできなかった……』
「大丈夫、もう……悲しむこと必要なんてないよ。本當のあなたはいい子なんだから」
『暖かい光だ……私もヒーリングのようになりたかった。ヒーリングを持つ者よ、お前の名は……』
「アリア。ヒーリングを持つ者の名はアリアよ」
『アリア……ありがとう』
感謝を述べるカース。
カースは少しだけ笑顔になる。
『村雨を持つ者よ……私の心臓を刺せ、エクスタスを持つ者よ……私の本體である指輪の寶石を壊せ』
カースはレッドムーンを全て消し去り、全ての呪詛を解除した。
満足した表情を見せたカースはアカメの村雨によって體を斬られ、シェーレのエクスタスによって寶石が壊れた。
『さようなら……帝具を持つ者達よ』
カースの體は灰になり、風に飛ばされた。
殘ったのはカースの一部だった指輪。
アリアはその指輪をはめ、冥福を祈った。
「全て終わったんだな、アリア」
アリアは後ろを向いた。
聞いたことがある聲だった。
「タツミ……!?」
後ろにいたのはタツミだった。
アリアは咄嗟に目をそらした。
アリアが祈る!
最終話 幸せを祈る
アリアには大きな罪があった。
表は地方から来た人を助ける善人、裏は地方から来た人を死ぬまで拷問する悪人。
アリアはタツミに体を斬られ、悪人らしい死を迎えるはずだった。
「アリア……」
だが、アリアはヒーリングに選ばれ、死ななかった。
「タツミ……」
タツミを見て後ずさるアリア。
タツミはまた私を殺しにきたんだとアリアは思った。
でもそれは違った。
「ありがとな、みんなを守ってくれて」
「え……!?」
「俺、ナイトレイドに入ったんだ。みんなを守るために戦っている。だから、ありがとう。この街を、ナイトレイドのみんなを守ってくれてありがとう」
アリアにとって予想外な言葉だった。
タツミの「ありがとう」と笑顔から憎しみや殺意は全くなかった。
「あ、あの……」
アリアは驚きつつも、タツミにどうしても言いたかったことを今ここで言うしかないと感じた。
タツミの目をよく見た後、アリアはゆっくりと頭を下げた。
「ごめんなさい。タツミの大切な人達を殺してしまって……ごめんなさい」
アリアは謝ったのだ。
ナイトレイドのメンバー達はアリアの姿を見て、驚いていた。
少し前まで地方の人間を家畜同然の扱いで殺してきた少女は自分の殺ってきた罪の重さを理解していたのだ。
「そうか、本当だったんだな。あれは……ただの夢じゃなかったんだな」
タツミは何故か嬉しそうだった。
嬉しそうなタツミの顔を見たアリアはどう反応すればわからないくらい動揺し、首を傾げた。
タツミはその嬉しそうな理由をアリアに言う。
「最近、同じを夢を見るんだ。イエヤスとサヨが俺の前に現れて、『アリアを許して』と何度も頼む夢。イエヤスなんて土下座までするんだよ。『いつか、アリアは謝る』って。ホントびっくりしたよ。そして………本当にアリアが謝るなんてな」
「イエヤスとサヨが……!?」
アリアは思い出す。
イエヤスの『タツミにも謝っとけよ!。許して貰えるように俺達がタツミに説得するからさ!』という言葉を。
「アリア、もう悪いことするなよ」
「うん……もうしないよ。それとね、タツミ。私、夢があるの……」
「夢?」
「うん、それはね……」
◇◇◇
数ヵ月後。
小さな村の中に現れる巨大な氷。
その氷を出したのは一人の将軍だった。
「これでいいか?、レイン」
「ああ、ありがとう。エスデス」
「まさか私の氷がかき氷の材料にされるとはな」
エスデスは自分が作った氷に触れ、少し笑った。
レインの戦友だった彼女は『カース事件解決』のお礼とレインに挨拶するため、『シエル』というまだ新しくできたばかりの村に尋ねた。
「それにしても、この村は子供が多いな」
「親がいない子供ばかり引き取ったからな。だから大人より子供の方が多いんだ」
「なるほど」
レインの説明を聞いて、納得するエスデス。
「痛い痛い、待て!いくら俺でも限界がある」
子供達に翼を引っ張られるウィン。
もうウィンの上に子供が7人も乗っている。
誰がどう見ても、定員オーバーである。
それを楽しそうにエスデスとレインは見ていた。
「お前らも手伝えよ!」
「「はいはい」」
レインとエスデスは子供の玩具になりかけているウィンを助けに行く。
まだ小さな村で裕福ではなかったが、村は笑顔で溢れていた。
「みんな、かき氷できたわよ」
小さなレストラン。
レストランのテーブルの上には沢山のかき氷。
エプロンを着たアリアが「早くしないと溶けちゃうよー」と叫ぶと、子供達は笑顔を見せ、アリアの周りに集まった。
「「アリアお姉ちゃん、ありがとう」」
「ありがとうを言うのは、私の方よ」
「「どうして?」」
「ふふ……秘密。それに氷を作ってくれたのはエスデスさんよ、みんな!エスデスさんにありがとうは?」
アリアがそう言った後、子供達の感謝の言葉がいっせいにエスデスに降り注ぐ。
帽子で自分の表情を隠すエスデス。
「よかったな、エスデス」
「ま、まあ……」
「かき氷、俺達も食べるか」
「そうだな。ウィン、動けるか?」
「ああ……なんとか。やっと解放された……」
ウィンは翼についた砂を払い落とす。
軽くジャンプしてレインの肩に乗ると、ウィンは小さなため息をついた。
「じゃあ、俺達も行きますか」
レイン達はアリアと子供達がいるレストランへと向かった。
レインは少しの前のことを思い出した。
それはカース事件後、アリアがタツミに言った『アリアの夢』。
「私ね……少し前に子供を助けたんだ。その時に子供が『お姉ちゃんありがとう』って。それが今でも嬉しいんだ。こんな私でも誰かを笑顔にできるんだって思ったの。だから……私は多くの子供を幸せにしたいんだ。それが私の夢」
アリアの夢を聞いたタツミは……
「いい夢だな」
笑っていた。
アリアが祈る!
………end
(目前作者暫時更新到這里,to be continued。據作者說,10月的第六章就是END。)
(已完結)
作者原創帝具的設定補充:
高速回復ヒーリング
罪人しか使えない指輪型の帝具。何故か使用者は善人になっていく。病気や怪我を治す効果があり、使用者の祈りで効果は強くなる。呪いを打ち消す能力があり、さらに幸運の効果が少しだけ追加される。奧の手は『優しい世界』。
黒夢ナイトメア
リボルバー型の帝具。闇を銃弾に変換し、撃つことができる。銃弾の威力は使用者の力が高いほど強くなる。レインの場合、自分の過去を闇として銃弾に変換しているため、弾は無制限である。奧の手『優しい世界』。
アリア
この物語の主人公。ヒーリングに選ばれ、奇跡的に助かる。カース事件後、彼女はレインと結婚し、シエルという村で幸せに暮らしている。レストランのオーナーシェフとして働いており、貧しい人にはただで料理を振る舞っていることがある。本人は「自分の罪はとても重い」と思っており、今でもヒーリングで多くの人を助けている。
レイン
多くの犯罪者を捕まえた伝説の賞金稼ぎ。小さい頃から、危険種を倒していた彼はエスデスと同等の強さを持っている。だが、いくら強くなってもカースを倒すことはできなかった。カース事件後は、シエルという村の村長となり、賞金稼ぎは副業となった。ウィンの背中に乗り、空を飛びながらパトロールするのが日課である。
ウィン
危険種とオオタカのハーフで、何故か人の言葉が喋れる。レインの相棒として、多くの人を救った。ちなみに、文字も書ける。60年後、壽命で亡くなったレインとアリアに「俺ももう少しで行く。でもその前に、最後の仕事をやるぜ」と言って、黒夢ナイトメアの新たな使用者となったレインの孫と一緒に旅に出た。